ウイスキーの王道とも言えるモルトウイスキーにおいて、主原料として君臨するのが「二条大麦」です。大麦を発芽させた大麦麦芽とモルトウイスキーの結びつきは、単にデンプンを供給するだけでなく、大麦由来の豊かな穀物香(モルティさ)と自己糖化酵素(アミラーゼ)を得るために欠かせません。
この大麦麦芽の乾燥工程で決定的な役割を果たすのが、スコットランドの湿原などに堆積したピート(泥炭)によるスモーキーフレーバーです。ヒースやシダ類、海藻などが数千年の歳月をかけて半炭化した泥炭を焚き上げ、その煙で湿った麦芽を燻すことで、フェノール化合物が麦汁に定着します。
アイラ島の蒸留所関係者は取材に対し、「麦芽にどの程度ピート香を染み込ませるか(フェノール値:ppm)の設計が、蒸留器の形状と並んでハウススタイルを決定づける」と証言します。フェノール値が50ppmを超えるヘビリーピーテッド麦芽からは薬品や燻製を思わせる強烈な個性が生まれ、逆にノンピート麦芽を使用すれば、大麦本来の甘露なシリアル感やりんごのようなエステル香が前面に押し出されます。