長年、風早翔太への届かぬ想いを抱え、自ら作り上げた「完璧な可愛い自分」の仮面を被り続けてきた胡桃沢梅。本編完結後に描かれた『君に届け 番外編〜運命の人〜』は、まさに彼女自身が人生の主役として踏み出す救済と覚醒のストーリーであった。女子大生となった彼女の前に現れたのは、かつて爽子の従兄として物語の端々に顔を覗かせていた赤星栄治だ。
過去のトラウマから男性に対して強い警戒心を抱き、素直になれない梅に対し、栄治は一切の飾りのない言葉で踏み込んでいく。意地を張り、自分を卑下しそうになる梅を、過剰に甘やかすことなくそのまま受け止める栄治の存在。誰かの「一番」になりたかった少女が、ついに自分自身の弱さを曝け出し、真の愛と向き合う過程は、多くのファンの涙を誘った。『運命の人』で描かれたラストシーンは、少女漫画史に残る屈指の名場面として、今も語り継がれている。