「暗くなったから大丈夫」という思い込みこそが、夏の散歩における最大の落とし穴です。夜間散歩でトラブルに見舞われた飼い主たちの間では、「夜7時過ぎに出て5分もしないうちに愛犬が座り込み、呼吸が荒くなった」「夜風は心地よかったのに、帰宅したら肉球が赤く腫れ上がっていた」といった切実な声が寄せられています。太陽が見えなくなっても、地上には目に見えない熱の罠が張り巡らされています。
夜の散歩が危険な決定打となるのは、アスファルトの蓄熱性と放射熱です。昼間に直射日光を浴び続けたアスファルトは、日没直後でも容易には冷めません。日中の日光を吸収した道路は、夜になっても床暖房の上を歩かせるような熱気を放ち続けます。風が吹いて人間の顔や首元が涼しく感じられても、路面からわずか15〜30cmの高さを歩く犬の周囲は、サウナのような熱気に包まれています。
さらに見落とされがちなのが、夜間の高湿度です。犬は主に口を開けて浅く速い呼吸をする「パンティング」によって、舌の水分を蒸発させて体温を逃がします。しかし、日没後は大気中の湿度が急上昇し、80%近くに達することも珍しくありません。湿度が極めて高い環境下では唾液が蒸発せず、体熱をまったく逃がすことができなくなります。その結果、直射日光のない夜間であっても、短時間の歩行で体温が40℃を超え、急性熱中症を引き起こしてしまうのです。