旅行者の間で最も頻繁に議論されるのが「宮殿の内部は見学できるのか」という点です。結論から述べると、セント・ジェームズ宮殿はバッキンガム宮殿のような一般向けの有料観光ツアーや夏季限定公開を実施していません。現役の公邸・王室機関として厳重な警備下に置かれており、通常時は敷地内への一般人の立ち入りが固く制限されています。
しかし、内部空間を体験できる特別な例外が存在します。それが敷地内に位置する「チャペル・ロイヤル(王室礼拝堂)」です。ここは例年10月からイースター(復活祭)の時期にかけての日曜礼拝において、一般の参祷者が礼拝に出席する形での入場が許可されています(※王室行事や治安情勢により変更あり)。
このチャペル・ロイヤルは、ジョージ王子(2013年)やルイ王子(2018年)の洗礼式が執り行われた神聖な場所としても知られています。1840年にヴィクトリア女王とアルバート公が結婚式を挙げた歴史的空間であり、ホルバインが手掛けたと伝わる豪奢な天井画は息をのむ美しさを誇ります。普段立ち入れないからこそ、厳かな祈りの場として開かれる日曜礼拝は、歴史の深奥に触れられる極めて貴重な機会となっています。