のび太の誕生日を語る上で絶対に外せないのが、てんとう虫コミックス第2巻に収録され、幾度もアニメ化・映画化されてきた名作エピソード「ぼくの生まれた日」です。
物語は、普段から口うるさく叱る両親に対して「自分は本当の親の子じゃないんじゃないか」「邪魔者扱いされている」と傷ついたのび太が、ドラえもんと共にタイムマシンで自分が生まれた「10年前の8月7日」へ向かう場面から始まります。
病院に駆けつけたのび太たちが目撃したのは、我が子の誕生に涙を流して歓喜する若き日の父・野比のび助と母・玉子の姿でした。のび助は誕生したばかりの赤ん坊を抱き上げ、希望に満ちた表情で次のように語りかけます。
「すくすくと、どこまでも高く伸びてほしい」
この純粋な願いから、男の子は「のび太」と名付けられました。父は庭に記念樹として苗木を植え、「将来は学者になるか、総理大臣になるか」と無限の可能性を誇らしげに夢見ていたのです。日頃の小言の裏にある、測り知れない深い愛情と誕生の瞬間の熱狂を知ったのび太は、現代へと戻り、両親の顔を見て静かに涙を流しながら机に向かいます。
「野比のび太」という一見するとユーモラスな名前には、成績や運動神経といった後天的な評価を超えた、「生命が健やかに育つことそれ自体への絶対的な肯定」が込められていたのです。