赤穂の市街地から車を東へ走らせ、坂越湾の入り江に差し掛かると見えてくる「海の駅しおさい市場」。この小規模な漁港拠点がこれほどまでに熱烈な支持を集める最大の要因は、ブランド牡蠣として名高い「坂越かき」の生産現場と消費現場が完全に一体化している点にあります。
坂越湾は、名水百選にも選ばれる清流・千種川からの豊かな森の恵みが注ぎ込む特異な海域です。波が極めて穏やかで良質な植物プランクトンが凝縮されるため、通常は出荷までに2〜3年を要する真牡蠣が、わずか1年で丸々と大きく育ちます。これが市場で「一年牡蠣」と呼ばれる坂越かきです。1年で育つ牡蠣は殻が薄く、そのぶん身に雑味や特有の生臭さが蓄積しません。加熱しても身が縮みにくく、純白でふっくらとした肉厚な食感と澄んだ甘みが際立ちます。
海の駅しおさい市場は、その水揚げ場に隣接する形で直売所と飲食エリアを展開しています。港から引き揚げられ、清浄な海水で紫外線殺菌処理を施されたばかりの貝が、数分後には目の前の焼き網へと運ばれる。この「流通時間をゼロに圧縮した鮮度体験」こそが、都市部のオイスターバーでは決して真似のできない決定的な強みなのです。