「ニューするが」の退役後も、駿河湾フェリーの航路そのものは決して平坦な道のりではありませんでした。マイカーの普及や伊豆縦貫自動車道の整備伸長に伴い、陸路移動の利便性が向上したことで、フェリー利用客数は長期的な減少傾向に直面します。
決定的な局面を迎えたのは2018年(平成30年)のことです。当時運航を担っていた鈴与グループ傘下の「エスパルスドリームフェリー」が、累積赤字の拡大を理由に翌年3月末での航路撤退(事業廃止)を正式発表しました。年間数千万円規模の赤字が慢性化し、民間企業単独での維持が限界に達した瞬間でした。
この危機に対し、静岡県および沿線自治体(静岡市、下田市、伊豆市、伊豆の国市、東伊豆町、河津町、南伊豆町、松崎町、西伊豆町)は迅速に動きました。駿河湾航路は単なる観光船ではなく、「海上の県道223号(ふじさん線)」として認定された公的交通インフラであり、大規模災害時(南海トラフ地震等)に陸路が寸断された際の「命をつなぐ海上緊急輸送路」としての極めて高い公益性を持っていたためです。
官民協議の末、2019年(令和元年)6月に静岡県と関係自治体、民間企業が出資する「一般社団法人ふじさん駿河湾フェリー」が設立され、公有民営方式による新体制が発足。船舶を自治体側が保有・管理し、運航をプロフェッショナルが担うスキームを構築することで、航路廃止の危機を脱することに成功しました。