二人が禁断の果実を口にした直接の契機は蛇の誘惑ですが、心理学や神学の分析では「自己の神格化(傲慢)」と「自律への焦燥」が根本要因として挙げられます。蛇は「神はあなたがたが神のようになるのを恐れて隠している」という疑念を植え付け、人間の中に潜む特権意識や全能感を刺激しました。
実を食べた直後、二人の目が開かれ、最初に生じた感情は神のような全知の境地ではなく「自らが裸であることへの恥と恐怖」でした。彼らはイチジクの葉を綴り合わせて腰を覆い、神の足音を聞いて園の木々の間に隠れます。
神から「食べるなと命じた木から食べたのか」と問われた際の人間のリアクションに、物語の最も根深い真実が露呈しています。
- アダムの弁明:「あなたが私のそばに置いたこの女が、あの木から取ってくれたので食べました」
- イブの弁明:「蛇が私を騙したのです。それで私は食べました」
アダムは妻のイブに罪を着せるだけでなく、「女を授けた神自身」に遠因があると主張し、イブは責任をすべて蛇になすりつけました。自らの自由意志で行った選択の責任を引き受けず、他者へ責任を転嫁する姿勢こそが、神との契約関係における決定的な決裂を生んだのです。