1998年末に娘・ヒカルが社会現象を巻き起こす中、母・藤圭子は徐々に表舞台から姿を消していきました。メディアではカジノ通いや2006年のニューヨーク・ケネディ国際空港における多額の現金差し押さえ騒動などがセンセーショナルに報じられ、母娘の確執ばかりが面白おかしく消費された時期もありました。
しかし、その裏側にあった現実は、はるかに切実なものでした。2013年8月22日、東京都新宿区のマンションから転落し、62歳で急逝した藤圭子。この衝撃的な一報の直後、宇多田ヒカルが発表した公式コメントは、日本中に深い衝撃と同時に、家族にしか分かり得ない真実を告げました。
ヒカルは手記の中で、母が「とても長い間、精神の病に苦しめられていた」と明かしました。感情の起伏の激しさや妄想に苦しみ、家族であっても心を通わせることが年々困難になっていたという事実。病気の進行とともに、自身が傷つけられることを防ぐために周囲と距離を置かざるを得なかった母の苦悩を、ヒカルは痛切な言葉で綴っています。公の場で見せていた奇抜な行動や放浪は、本人の気まぐれなどではなく、病の苦痛から逃れるための終わりのない彷徨だったのです。