ネット上のグルメ記事やSNSのショート動画では「満鶏軒=超濃厚な鴨ラーメン」と一括りに紹介されがちですが、ここに最大の罠が存在します。満鶏軒には、透き通った「鴨清湯(ちんたん)」と、強火で白濁するまで骨を砕き炊き上げた「鴨白湯(ぱいたん)」という、性質が完全に正反対の2系統が存在します。
初訪問者が犯しがちなミスが、あっさりした鴨南蛮蕎麦のようなイメージで「特製鴨白湯」を注文してしまうケースです。満鶏軒の鴨白湯は、ポタージュスープを想起させるほど粘度が高く、コラーゲンと鴨脂が極限まで乳化した超ヘビー級の仕上がりです。濃厚民族と呼ばれる濃い味好きにはたまらない一杯ですが、淡麗系を好むユーザーからは「重すぎて完食がきつかった」というミスマッチが生じることがあります。
また、夏季を中心に提供される「昆布水鴨中華つけそば」についての誤解も見受けられます。「麺が昆布水でぬるくなっている」という声がありますが、これは意図された調理技法です。がごめ昆布等のフコイダン成分を含む豊かなとろみが麺をコーティングし、熱々の鴨つけ汁にくぐらせた際の温度差と喉越しの滑らかさを生み出すための高等技術です。提供側の緻密な設計を理解して食すことで、一杯から得られる情報量と感動は何倍にも膨らみます。