地図研究家・今尾恵介の現在と経歴に迫る|熱狂を呼ぶ独自の観察眼の全貌を丁寧に掘り下げてご紹介します。
今尾氏の名を世に決定づけた記念碑的仕事が、2008年から新潮社で刊行された『日本鉄道旅行地図帳』シリーズです。日本全国のJR、私鉄、路面電車はもちろん、過去に存在した廃線や専用線、未成線に至るまで、あらゆる鉄路の歴史的変遷を精緻な地図上に落とし込んだこの企画は、鉄道ファンのみならず歴史愛好家や一般読者をも巻き込み、シリーズ累計150万部を超える記録的大ベストセラーとなりました。
同シリーズが画期的だったのは、鉄道を単なる「乗り物」としてではなく、国土開発や地域社会の盛衰を映し出す「鏡」として捉え直した点です。どの駅がいつ開業し、いつ改称され、どの線路が産業の衰退とともに消えていったのか。一枚の地図の中に時間の堆積(レイヤー)を表現し尽くした構成力は、今尾氏の地図読解力と編集的知見の集大成と言えます。
主要著書・シリーズテーマ・検証対象一般的な同種本との差異編集部の見解・評価日本鉄道旅行地図帳(新潮社)全国の鉄道路線・廃線の歴史的変遷(累計150万部超)車両中心の鉄道趣味本と異なり、地形と歴史の融合図面を全編採用地図出版史に残る金字塔。資料性と閲覧性の両立が極めて秀逸住所と地名の大研究(新潮選書)地名変更の功罪、住居表示制度、行政境界の変遷単なる語源解説にとどまらず、行政制度や住民意識の歪みを鋭く告発平成の大合併などで失われた伝統地名への危機感を喚起する名著鉄道でゆく凸凹地形の旅(朝日新書)鉄道線路がなぜそこを通るのかを地形の高低差から解読車窓風景を単なる観光景観ではなく、地質・河川・河岸段丘と連動して描写街歩きや鉄道旅の解像度を劇的に高めるフィールドガイドの傑作