昭和・平成・令和という3つの時代を跨ぎ、エンターテインメントの最前線で肉体を酷使し続けてきた鹿賀丈史の現在地は、現代社会における「高齢表現者のキャリアデザイン」の観点からも極めて示唆に富んでいます。
かつての日本芸能界では、高齢になっても過去のスタイルを無理に維持しようとして健康を損ねたり、逆に早期に引退して隠遁生活に入ったりする極端なケースが散見されました。しかし鹿賀丈史の選択は、自らの声帯の経年変化や骨格の衰えを冷徹に受け入れたうえで、「現在の自分にしか出せない響きと陰影」を武器にリブランディングを図るという、極めてプロフェッショナルなアプローチです。
観客やメディア側も、「往年の全盛期と同じ声量が出ているか」「昔より痩せたか」という減点方式の視点を捨て、70代中盤の肉体から放たれる圧倒的な人生の年輪と様式美を享受する視座が求められています。