横領事件の炎上をさらに深刻化させたのが、ブロガーであり個人投資家のやまもといちろう(山本一郎)氏によるネット上での追及でした。やまもと氏は、着服された資金の流出先に反社会的勢力が関与しているのではないかという疑義を投げかけ、企業統治の不健全さを厳しく糾弾しました。
この指摘に対し、AppBank側は外部専門家を含む調査委員会を組織して厳格な内部調査を実施。結果として、「着服金が反社会的勢力へ直接渡った事実や、企業として暴力団関係者と交際を持っていた事実は確認されなかった」とする調査結果を公表しました。さらに同社はやまもと氏の発信内容を名誉毀損として法的措置の検討を明言するなど、ネット論客と上場企業による異例の全面対立へと発展したのです。
この激しい情報戦は、ネットメディアの読者や投資家の間で「火のない所に煙は立たないのではないか」という疑念を長期化させる結果を生みました。実業とネットカルチャーが交錯する中で、事実関係の真偽以上に「疑われていること自体」が市場価値を侵食していったプロセスは、初期のクリエイター主導型ベンチャーが直面した最大の危機管理の失敗例として今もビジネススクール等で語り継がれています。