桑野信義を襲った病魔の正体は、進行性の大腸がん(直腸がん)でした。異変が現れたのは2026年秋のことです。激しい腹痛や体調不良を覚えながらも当初は過密スケジュールを理由に受診を先延ばしにしていたものの、精密検査を受けた結果、医師から告げられた病状は極めて深刻なものでした。
進行度はステージ3b。すでに周囲のリンパ節への転移が確認されており、医師からは「もう少し発見が遅れていれば命の危険に直結していた」と告げられる緊迫した状況でした。自著や手記で明かされたところによると、告知を受けた瞬間は頭が真っ白になり、先行きの見えない暗闇に突き落とされたような感覚を覚えたといいます。
2026年2月、都内の専門病院で約8時間半に及ぶ大手術が決行されました。患部の摘出とリンパ節郭清は無事に成功したものの、本当の試練は手術の後に待ち受けていた抗がん剤治療でした。再発予防のために選択された化学療法では、激しい吐き気、激痛、そして末梢神経障害による強烈な手足のしびれが彼を苦しめました。特に指先の感覚麻痺は、後述するトランペッターとしての生命線に直結する絶望的な打撃となったのです。