過去には、捕獲した熊に唐辛子スプレーを吹きかけたり、ドラム缶を叩いて恐怖を与えたりした上で山奥に放す「学習放獣」が一部の地域で試みられてきました。「人間は怖いものだ」と学習させて森へ戻す手法です。
しかし、近年の追跡調査では、一度ゴミ集積所や果樹園の味を覚えた熊は、数十キロ離れた山奥に運ばれても高確率で元の生活圏や別の集落へ戻ってくることが明らかになっています。放獣された個体が別の集落で住民を襲う重大事故も発生しており、周辺住民の安全承諾を得られない以上、放獣という選択は極めて困難になっています。
さらに近年急増しているのが、生まれながらに人里近くで育ち、人間や車の走行音を恐れない「アーバンベア(都市型熊)」です。過疎化と高齢化によって里山の手入れが放棄され、森林と住宅街を隔てる「緩衝帯」が消滅した結果、熊にとって住宅街は「危険な場所」ではなく「栄養価の高いエサが簡単に手に入る魅力的な餌場」へと変貌してしまいました。