サウナーの間で定着した「ととのう」という言葉は、心身のリフレッシュを象徴するポジティブな表現として用いられます。しかし、自律神経生理学の観点から見れば、サウナで整うリスクは極めて過酷な身体反応の上に成り立っています。
高温サウナで極限まで交感神経が高ぶった後、水風呂で生命の危機を感じた生体は、外気浴によって急激に副交感神経優位へとシフトします。この際、血中に残留した大量のアドレナリンと急激な血流再開が合わさることで、脳内に独特の陶酔感や浮遊感がもたらされます。つまり「ととのう」の正体は、過酷な肉体ストレスから解放された瞬間に脳が感じる防衛反応の一種であり、身体が軽度のショック状態から立ち直るプロセスに他なりません。
この危険なバランスを完全に破壊するのが、飲酒サウナの危険性です。アルコールには強い利尿作用があり、体内の水分を急速に奪います。さらにアルコールの血管拡張作用とサウナの熱刺激が組み合わさると、生体の血圧調整機能が完全にショートします。
泥酔状態でサウナに入ると、サウナによる重度の脱水症状が進むだけでなく、熱による眠気とアルコールの鎮静作用でサウナ室内で眠り込んでしまい、深部体温が42℃を超えて多臓器不全に至る熱中症死亡事故が毎年のように報告されています。「酒を抜くためにサウナに入る」という俗説は医学的に完全な誤りであり、死に直結する行為です。