Q1:中核症状とBPSD(周辺症状)のどちらを優先して治療すべきですか?
A1:臨床現場では、まずBPSD(周辺症状)の鎮静化が最優先されます。暴言や暴力、著しい不眠、不潔行為などのBPSDは、本人の苦痛であると同時に介護者の生活を瞬時に破綻させるためです。環境調整や介護対応の見直しを行い、必要に応じて少量の抗精神病薬や抑肝散などの漢方薬で精神的興奮を抑えます。その上で、認知機能の低下を緩やかにするための抗認知症薬(中核症状へのアプローチ)を併用していくのが標準的な治療戦略です。
Q2:本人が「病院に行く必要はない」「私は狂っていない」と受診を拒否する場合の対処法は?
A2:真っ向から「物忘れがひどいから物忘れ外来に行こう」と説得するのは逆効果です。認知症の当事者は強いプライドと不安を抱えています。「市町村の健康診断で頭の血流も診てもらえる」「最近眠れないと言っていたから、かかりつけの内科で睡眠の相談をしよう」など、本人が納得しやすい理由を設定してください。また、受診前に家族だけで地域包括支援センターや専門医療機関に足を運び、事前相談を通じて「主治医から自然に検査を勧めてもらう」根回しを行うことが極めて有効です。
Q3:物忘れの症状が現れたら、すぐに車の運転をやめさせるべきですか?
A3:直ちに運転を停止させる段取りを進める必要があります。実行機能障害や判断能力の低下、空間認識の乱れ(失認)は、アクセルとブレーキの踏み間違いや高速道路の逆走といった重大事故に直結します。道路交通法においても、認知症と診断された場合は運転免許の取消しまたは停止処分の対象となります。「車検が通らなかった」「部品が壊れた」といった物理的な口実を作って車両を処分するなど、事故が起きる前に断固とした措置を講じるのが家族の社会的責任です。