2020年代半ば以降、社会学および児童福祉の領域で深刻な国際的議論となっているのが、親が子どもの成長記録を無遠慮にSNSへ投稿する行為、いわゆる「シェアラウンティング(Sharenting)」の問題です。
フランスをはじめとする欧州諸国では、子どものプライバシー権や肖像権を侵害したとして、成人した子どもが親を相手取って損害賠償を請求する訴訟が相次いでいます。日本国内においても、生成AI技術の爆発的な普及に伴い、ネット上に公開された子どもの何気ない日常スナップから顔データが学習されたり、ディープフェイクや位置情報特定などの犯罪に悪用されたりするリスクが現実の脅威となっています。
家族社会学の観点からは、親が「可愛い我が子を自慢したい」「共感を得たい」という親自身の自己承認欲求と、子ども自身の独立した人格(心理的バウンダリー)を混同する「母子・父子の心理的共依存」が根底にあると指摘されています。子どもは親の所有物ではなく、自己の肖像やプライベートな過去をどのように開示するかを選択する「デジタル自己決定権」を持っています。家族の思い出を未来に健全な形で継承するためには、ネット空間とプライベート空間を厳格に切り離すリテラシーこそが不可欠です。