熱湯をかけると植物が枯れるのは、単純な熱変性によるものです。植物の細胞壁や葉緑素を構成するタンパク質は、60℃〜70℃以上の熱に晒されると瞬時に凝固・破壊されます。細胞が破壊された葉や茎は水分保持能力を失い、数時間から翌日には黒褐色に変色してカラカラに萎縮します。薬剤を使わずに物理的な熱ショックを与えるため、薬剤耐性を持った雑草にも等しく作用する点が大きな特徴です。
しかし、「根まで完全に枯れるか」という問いに対する科学的な答えは、雑草の種類と根の深さによって完全に分かれます。発芽直後の幼苗や、オオバコ・スズメノカタビラといった根が浅い1年草であれば、十分な量の熱湯が地中数センチまで浸透して根ごと熱変性させることが可能です。
一方で、地中深くまで強固な直根や地下茎を張り巡らせている多年草の場合、熱湯が地表に触れた瞬間に土壌の水分や外気によって急激に温度が低下します。地中5cm以下の深さでは、注いだ熱湯が40℃〜50℃程度まで冷め、根の成長点を死滅させるには至りません。結果として「地上部は一晩で枯れたが、数週間後に地下茎から何食わぬ顔で新芽が再生する」という現象が起きます。