禅道場における五観の偈の唱え方は、静寂の中で厳粛に行われます。合掌低頭し、引磬(いんきん=鐘)の合図とともに僧侶全員が声を揃えて低音で唱和します。唱え終えると、器を両手で押し頂き、感謝を捧げてから最初の一口を口に運びます。
この「器を頭の高さまで掲げる(頂く)」所作こそが、日本人が日常的に使う「いただきます」という言葉の語源です。神仏や自然の命、労働を提供してくれた人々への敬意を込めて「命を頂戴する」という意味が、食前の挨拶として定着しました。
また、「ごちそうさま(御馳走様)」という言葉も、客人のために馬を走らせて四方八方から食材を調達してくれた苦労への感謝を表しています。五観の偈の第一句「計功多少 量彼来処」の精神が、日本語の挨拶の中にそのまま息づいていることが分かります。