「沖縄そばには蕎麦粉が一切入っていないのに、なぜ『そば』と呼ばれるのか」という疑問は、本土の読者から非常に多く寄せられます。原材料は小麦粉100%にかんすい(または木灰汁)と食塩水であり、製法としては中華麺やうどんに近い組成を持っています。
琉球王国時代に中国から伝来した宮廷料理をルーツに持つ沖縄そばは、庶民の味として急速に普及しました。しかし本土復帰後の1976年、公正取引委員会より「そば粉を3割以上使用していないものは『そば』と表示してはならない」という生めん類の規約に基づく是正勧告を受け、一時は名称消滅の危機に直面しました。
これに対し、沖縄生麺協同組合を中心とした地元関係者が「長年親しまれてきた伝統的な食文化である」と粘り強く交渉を重ねました。その結果、1978年10月17日に特殊名称としての「本場沖縄そば」が正式認可され、この日は現在「沖縄そばの日」として親しまれています。
麺の質感を生み出す鍵となるのが「かんすい」です。伝統製法ではガジュマルなどの木を燃やした灰の上澄み液(木灰汁・もくあく)を練り込み、独特の縮れとコシ、芳醇な風味を生み出していました。現在では木灰そばを掲げるこだわり店を除き、アルカリかんすいを用いたコシの強い平打ち麺が主流となっています。
そしてスープの土台を支えるのが豚骨鰹節スープの出汁です。豚骨を白濁させずに弱火で澄み切らせた清湯(チンタン)スープに、沖縄県民が愛してやまない上質な鰹節(主に本部町などで加工される削り節)の香りを重ね合わせます。豚のコクと鰹のキレが調和したスープは、濃厚な豚肉のトッピングを飽きずに最後まで楽しませる絶妙な設計です。