物干し竿の移動販売で流れる「たけや〜さおだけ〜」というフレーズは、日本の伝統的な行商文化にルーツを持ちます。江戸時代から明治・大正期にかけて、天秤棒を担いで竹製の物干し竿を売り歩いていた「竿竹売り」の呼び込み口上が原型です。当時の江戸では竹林から切り出した生の竹竿が生活必需品であり、「竹屋、竿竹」と声を張り上げて長屋を巡る姿が庶民の日常でした。
昭和後期から平成にかけて軽トラックによる販売へと移行すると、拡声器から流れる録音済みのたけやさおだけ アナウンス 音声テープが全国へ普及しました。歌詞の元ネタは地域ごとに微妙な差異があるものの、最も代表的なパターンは以下の構成です。
「たけや〜さおだけ〜。2本で1000円、20年前のお値段のままでお売りいたします。痛んだ竿の交換もいたします。たけや〜さおだけ〜」
この音声テープは専門の教材会社や音響機器メーカーが制作・販売していたもので、昭和の情緒を感じさせる独特の哀愁を帯びたメロディは、主婦層が家事の手を止めて外の様子をうかがう絶妙な周波数特性(2kHz〜4kHzの中高音域)を備えていました。何十年経っても「20年前のお値段」と言い続ける文句のシュールさも含め、街の風物詩として定着していった背景があります。