交通安全工学および危機管理の視点からこの事故を総括すると、現代のドライバーが心に刻むべき極めて重い教訓が浮かび上がる。
高速道路における最も重大な危険は「最初の事故」そのものよりも、その後に発生する「二次事故」である。時速80km〜100kmで走行する車両にとって、前方に停止車両や歩行者が現れた際、認知・判断・制動にかかる空走距離と制動距離を合わせると、回避は物理的にほぼ不可能となる。特に夜間や雨天時は、前照灯の光が乱反射し、路上にいる人間を認識した瞬間に衝突してしまう。
万が一、高速道路上で事故や故障により自走不能となった場合の鉄則は以下の手順に尽きる:
- ハザードランプの点灯:即座に後続車へ異変を知らせる。
- 発煙筒と停止表示器材(三角表示板)の設置:自車の後方50m以上の路上に設置する(※後続車に十分注意しながら行う)。
- ガードレールの外側へ即座に退避:絶対に車内や本線路上にとどまらず、全員がガードレールの外側の安全な場所へ移動する。
- 非常電話または110番での通報:安全を確保した場所から通報を行う。
桜塚やっくんの事故は、どれほど卓越した才能を持ち、未来に満ちた人物であっても、高速道路の物理法則の前には抗えないという現実を突きつけた。彼の残した名作コントや音楽の輝きを称えるとともに、その悲劇から得られた安全への知恵を一人ひとりが実践することこそが、最大の供養となる。