日本国内の地理教育や旅行番組でも長年混同されがちだったのが、「喜望峰=アフリカ大陸最南端」という言説です。しかし、厳密な地理座標を確認すると、喜望峰(南緯34度21分29秒、東経18度28分19秒)はアフリカ大陸の「最南西端」に過ぎません。
真のアフリカ大陸最南端は、喜望峰から東南東へ直線距離で約150km、陸路で約220km離れた場所に位置するアガラス岬(Cape Agulhas/南緯34度50分00秒、東経20度00分09秒)です。緯度にしてアガラス岬のほうが約29分(約54km)南に位置しており、国際水路機関(IHO)の定義上も大西洋とインド洋の公式な境界線はアガラス岬を通る東経20度子午線と定められています。
それにもかかわらず、なぜ喜望峰が最南端として記憶され続けてきたのでしょうか。最大の理由は、15世紀の大航海時代において、ヨーロッパから南下してきた航海者たちが「アフリカ西岸を南下し続け、東(インド方面)へと進路を変える転換点」として認識したランドマークがこのケープ半島周辺だったためです。船乗りにとって航行上の最大の難所であり、針路を北東へ変える劇的な変曲点だった喜望峰のインパクトが、実測値としての最南端という事実を覆い隠して語り継がれてきたのです。