なぜ人によって見え方が違うのか?だまし絵の脳科学と心理テストの真相

なぜ人によって見え方が違うのか?だまし絵の脳科学と心理テストの真相

なぜ人によって見え方が違うのか?だまし絵の脳科学と心理テストの真相について知っておくべき 理由を厳選して解説いたします。

私たちが「モノを見る」とき、目は単なる高性能カメラのレンズに過ぎず、実際にその映像を組み立てて解釈しているのは大脳皮質の後頭葉から側頭葉・頭頂葉にかけての神経ネットワークです。物理的な事実として、人間の眼球に入射するのは波長380nm(ナノメートル)から780nmの電磁波である可視光線に過ぎません。網膜の視細胞が電気信号へと変換した情報は、二次元の平坦で断片的な刺激の集まりに過ぎないのです。

ここで重要となるのが、多義図形(たぎずけい)と呼ばれる特殊なトリックアートにおいて脳が下す判断です。多義図形とは、1つの画像の中に輪郭線や濃淡を共有する複数の解釈(意味)が同時に埋め込まれた図形を指します。脳が視覚情報を処理するルートには、以下の2つの経路が存在します。

1つ目は、目から入った生データ(輪郭、明暗、色彩)をそのまま積み上げていくボトムアップ処理。2つ目は、脳がこれまでの人生で蓄積してきた記憶、知識、その場の期待、直前に見ていたもの(プライミング効果)を照合し、「これはこういう物体に違いない」と推論を下すトップダウン処理です。

網膜に届く情報が「2通り以上に解釈できる曖昧な状態」にある場合、脳はどちらか一方の仮説を選択し、ゲシュタルト心理学で言う「図(認識の対象となる主役)」と「地(背景)」を瞬時に切り分けます。脳は非常に合理的な器官であるため、1つの輪郭に対して「同時に2つの意味」を持たせる処理を拒絶し、どちらか片方だけを意識の表層に浮かび上がらせます。これが、人によって見え方が違う絵の根本的な理由です。

前田 葵
著者

前田 葵

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。