園芸店に並ぶ土の中で、赤玉土と鹿沼土はどちらも火山灰に由来する無機質の土壌です。しかし、採取される地層や生成プロセスが異なるため、植物の根に与える影響には天と地ほどの開きがあります。
赤玉土は、関東平野に広く堆積している関東ローム層の赤土を採掘し、乾燥させて粒状にふるい分けたものです。その主たる特徴は、粒子の中に微細な隙間(毛管孔隙)と大きな隙間(非毛管孔隙)をバランスよく保持している点にあります。この構造によって赤玉土の保水性と排水性は非常に高い次元で両立されており、水を与えれば余分な水分を速やかに排出しつつ、植物が必要とする水分と空気を適度に抱え込みます。酸度はpH6.0〜6.5前後の弱酸性を示し、日本の雨水に近い穏やかな環境を作るため、あらゆる草花や観葉植物、花木に対して「基本用土の王様」として機能します。
一方、鹿沼土は栃木県鹿沼市周辺に分布する約3万年前の赤城山噴火に伴う火山灰軽石層(鹿沼軽石層)から採掘されます。地層から掘り出された軽石質の土であるため、乾燥すると白っぽい黄土色になり、水を含むと鮮やかな黄色に変化します。特筆すべきは、鹿沼土の酸性とpH値がpH4.5〜5.5という明確な酸性を示す点です。内部に無数の独立気泡を持つ多孔質構造であるため、水はけと通気性は赤玉土を大きく上回る軽快さを誇りますが、酸性を嫌う植物に与えると根の細胞を傷め、リン酸や微量要素の吸収を阻害して生育不良を引き起こします。
知らずに使って植物が枯れる最大の原因は、この「酸度の違い」と「水持ちの違い」に集約されます。アルカリ性から中性を好むオリーブやハーブ類に鹿沼土をメインで与えれば酸度障害で根が萎縮し、逆に乾燥を好む多肉植物に微粉の多い低品質な赤玉土を与えれば過湿で根腐れを誘発します。両者の科学的性質を理解することが、土作りの出発点です。