単体では表外漢字である「肋」ですが、日本語の語彙の中では非常に重要な熟語をいくつも形成しています。知っておくことで教養と実用性の両面で役立つ、肋を使った熟語一覧とその背景を整理します。
まず筆頭に挙げられるのが「肋骨(ろっこつ)」です。解剖学上、人間には左右12対(計24本)の肋骨が存在し、胸椎から前方の胸骨へと弧を描いて連結しています。激しい咳やくしゃみ、スポーツ時の衝突などで亀裂骨折を起こすことも珍しくなく、整形外科のカルテなど現場では極めて身近な用語です。
続いて、臨床現場や健康情報で頻出するのが「肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)」です。背骨から肋骨に沿って走行している末梢神経(肋間神経)が何らかの原因で圧迫・刺激され、胸や脇腹、背中にかけて電撃痛のような鋭い痛みが走る症状を指します。ストレスや姿勢の悪化、帯状疱疹の初期症状としても見られ、現代人の悩みの種となっています。
難読熟語として試験やクイズでも定番なのが「肋木」です。この肋木読み方は「ろくぼく」と読みます。学校の体育館の壁面に固定されている、はしごが連続したような木製の運動器具を覚えているでしょうか。スウェーデン体操の創始者であるペール・ヘンリック・リングが考案したリハビリ・運動療法用具であり、その横木が並ぶ形状があばら骨に酷似していることから「肋木」という訳語が当てられました。
さらに、中国古典やビジネスシーンの比喩表現として重宝されるのが「鶏肋(けいろく)」です。『三国志』の「魏志」武帝紀の注に引く『九州春秋』において、曹操が放った言葉として名高い故事成語です。「鶏のあばら骨は、出汁は取れるが食べるほどの肉はついていない」という観察から転じて、「大して役に立つわけではないが、捨てるには惜しいもの」を意味します。現代のプロジェクト管理やリソース配分の議論において、「その施策は鶏肋ではないか」といった文脈で用いられます。