近年、東京各地の商業施設内に「ネオ横丁」と呼ばれる昭和風のフードホールが相次いで誕生した。清潔でエアコンが効き、洗練されたマーケティングが施されたそれらの空間は確かに賑わいを見せている。だが、呑兵衛横丁の店主たちが漂わせる空気感は、演出されたレトロとは根本的に一線を画す。
使い込まれた木製カウンターの傷、長年の煙で燻された壁紙、そして店主それぞれの頑固なこだわり。ここにあるのは商業的にデザインされたノスタルジーではなく、70年以上の年月を経て積み上げられた本物の生活臭だ。世界中から本物を求める旅行者が押し寄せる現在、商業化されたエンターテインメントとしての居酒屋に飽き足らない人々が、この路地の本物感に吸い寄せられている。