真冬に氷点下近くまで気温が下がる地域であっても、指定の短い靴下(ハイソックスや白ソックス)以外の着用を認めない学校が数多く存在していました。なぜ防寒着として極めて一般的な黒タイツが、そこまで厳しく排除されてきたのでしょうか。地方自治体の教育委員会会議録や教育社会学の調査資料を紐解くと、そこには教育的な合理性とはかけ離れた、いくつかの特異なロジックが浮かび上がってきます。
第一に挙げられていたのが、「色気や艶っぽさを感じさせるため、中高生らしくない」という大人の視線による決めつけです。昭和から平成にかけて、黒いレッグウェアに対して「大人の女性の夜の装い」といったステレオタイプを押し付ける一部教員の認識が根強く残っていました。生徒を性的な視線から守るという建前でありながら、実際には「黒タイツを穿くと性的な目で見られる」という大人の一方的な歪んだ価値観を児童生徒に転嫁していた構図です。
第二に、「華美であり、贅沢品にあたる」という時代錯誤な理由です。タイツが日常的な防寒インナーとして定着する以前の価値観を引きずり、「学生は寒さに耐えて心身を鍛錬すべき」という戦前・高度経済成長期の精神論が温存されていました。制服の統一感を崩したくないという画一的な管理意識も重なり、制服黒タイツ禁止理由の多くは「これまで禁止だったから」という前例踏襲に縛られていたのが実情です。