日常の買い物ではクレジットカードと同等に使えるデビットカードですが、特定の加盟店では端末に差し込んだ瞬間に弾かれます。その代表例がガソリンスタンド、高速道路のETC、機内販売、一部の月額サブスクリプション決済です。
ネット上では「なぜ使える場所と使えない場所があるのか」「差別されているのではないか」といった不満の声が散見されますが、これには決済ネットワークの通信仕様と貸倒リスクに関する明確な理由があります。
ガソリンスタンドを例に挙げましょう。セルフ給油機でカードを通す段階では、利用者が何リットル給油し、最終的な請求金額がいくらになるかが確定していません。クレジットカードの場合、カード会社が信用を担保しているため「このカードは有効である」という事前承認(オーソリゼーション)さえ取れれば、給油完了後に確定金額をまとめて請求できます。
しかし、即時引き落としが前提のデビットカードで同じ処理を行おうとすると致命的な問題が生じます。例えば口座残高が1,000円しかない状態で満タン給油され、代金が8,000円になった場合、7,000円分の口座残高マイナス(実質的な無担保貸し倒れ)が発生してしまうのです。この未回収リスクを避けるため、多くのデビットカードはガソリンスタンドでの決済をシステム側で一律ブロックしています。一部対応している銀行デビットでも、「口座に1万円以上の残高があること」を一律の条件として設定しているのはこのためです。
高速道路のETCカードにデビットカードが存在しない理由も同様です。料金所ゲートを時速20kmで通過するわずか数ミリ秒の間に、銀行のホストコンピュータとオンライン通信を行って残高を確認することは通信インフラ上不可能です。もし残高不足でゲートのバーが開かなければ、後続車両を巻き込む重大な追突事故を引き起こします。そのため、ETCシステムは「オフラインでも無条件で後払い決済を保証できる」クレジットカードの信用力に完全に依存して設計されているのです。