宮中の食文化を市井に伝え、最高峰の日本料理へと昇華させてきたのが、かつて皇室御用達として名を馳せた老舗の名店たちである。その筆頭が、京都吉兆となだ万だ。
京都吉兆が手がけるおせちは、器の選定から盛り付けのミリ単位のバランスに至るまで、まさに総合芸術。丹波産の大粒黒豆や職人が手仕事で仕上げる数の子、伊勢海老の艶やかな佇まいは、観る者を圧倒する。一方、天保元年創業のなだ万は、歴代の皇族や賓客をもてなしてきた歴史を誇り、伝統の出汁を用いた上品な煮しめや繊細な焼き物で確固たる存在感を放つ。両者が追求するのは、単なる豪華さではない。箸を進めるごとに広がる、静謐で奥深い出汁の余韻である。