上野の東京国立博物館に足を運ぶと、当時の染織技術がいかに卓越した水準にあったかを目の当たりにできる。幻の技法と呼ばれる辻が花や、絵画のように自由な図柄を描き出す友禅染の小袖は、布地そのものが一級の美術品として完成されている。防虫や調湿に配慮され、数百年を経てもなお鮮やかな色彩を保ち続けるテキスタイルは圧巻だ。
現在、文化庁を中心に歴史的染織品のデジタルアーカイブ化や、国宝・重要文化財の修復事業が進められている。だが課題も少なくない。天然の藍や紅花による染色、手紡ぎの糸作り、手織りの技術など、伝統繊維・染織産業の現場では後継者不足が深刻な影を落とす。歴史的な美を単なる過去の遺産として陳列するだけでなく、生きた技術として現代の産業へいかに結びつけるかが問われている。