門を潜り、書院に通されると、部屋いっぱいに爽快な鈴虫の鳴き声が広がっている。ケースの中で大切に育てられた約1万匹の鈴虫が、室温調整された空間で一年中澄んだ音色を奏でているのだ。その幻想的な空間で繰り広げられるのが、名物の「鈴虫説法」である。
説法と聞くと、身構えてしまう人もいるかもしれない。しかし、その心配は無用だ。住職や僧侶が語る内容はユーモアと人間味に溢れ、場内には笑い声が絶えない。目の前に出されるお茶と銘菓「寿々むし」を味わいながら耳を傾ける時間は、日常の慌ただしさで凝り固まった心を柔らかく解きほぐしてくれる。
説法の中で語られるのは、日々の生き方のヒントだ。「素直な心」「感謝の気持ち」「他者への思いやり」。現代社会を生きる私たちが忘れがちな本質を、軽妙な語り口で心に染み込ませていく。説法が終わる頃には、誰もが晴れやかな表情を取り戻している。