「先週までは普通にかかっていたのに、今日急に動かなくなった」と語るライダーは少なくありません。しかし、化学反応を利用する鉛バッテリーにおいて、完全な突然死は稀であり、実際には数週間から数カ月かけて放置による劣化(放電)が進行しています。
バイクに乗っていなくても、時計のバックアップ機能やイモビライザー(盗難防止装置)の作動により、常に微弱な電流(暗電流)が流れ続けています。およそ1カ月以上エンジンをかけずに放置すると、自然放電と暗電流の消費が重なり、セルモーターを駆動するための電圧を維持できなくなります。
放置されたバッテリー内部では、希硫酸と鉛プレートが反応して絶縁性の結晶を作る「サルフェーション(白色硫酸鉛化)」が発生します。この結晶が極板の表面を覆い尽くすと、電気の通り道が塞がれ、外部から充電器を繋いでも電流を受け付けない「回復不能な劣化状態」へと陥ります。
トラブルを未然に察知するためには、日常的なバイクのバッテリー上がりの症状を把握しておくことが欠かせません。
・メインキーをONにした際、ニュートラルランプや液晶メーターの表示が薄い、またはバックライトが明滅する。
・ホーン(警音器)を鳴らした際、音がかすれる、または弱々しい。
・ウィンカーを作動させると点滅周期が異常に遅くなる、あるいは点滅せず点灯したままになる。
・スタータースイッチを押した瞬間、セルモーターが「キュル…キュル…」と極端に重そうに回る、あるいは「カチカチ」というリレー音だけが鳴ってモーター自体が回転しない。
正確な状態を把握するには、デジタルマルチメーター(テスター)を用いたバイクのバッテリー電圧測定が確実です。シートやサイドカバーを外し、キーOFF時の端子間電圧を測定します。
・12.6V〜12.8V以上:健全な満充電状態。
・12.2V〜12.4V:充電不足(放電率50%前後)。要補充電。
・12.0V未満:完全放電・寿命の可能性大。セル始動はほぼ不可能。