戦後の出版界において、長谷川町子とその家族が成し遂げたもう一つの偉業が、自前出版社「姉妹社」の設立です。大手出版社を通さずに自らの手で単行本を出版・流通させる仕組みを整え、利益を中間マージンに吸い取られることなく作家自身へ還元させました。
この試みは大成功を収め、『サザエさん』の単行本は累計発行部数数千万人分という驚異的な記録を打ち立てます。しかし、1992年に町子が亡くなった後、姉妹社は翌1993年に解散。刊行物はすべて絶版となり、作品の著作権や原画の管理は一般財団法人長谷川町子美術館へと一本化されました。
この解散の過程では、唯一子孫のいた三女・洋子と、町子・毬子側との間で方針や遺産・権利の承継を巡る感情的なすれ違いが一部で報じられたこともあります。しかし実態としては、町子の遺志に基づき、作品と莫大な美術コレクションが散逸することを防ぐため、財団法人を通じた公的な永久保存が選択されたというのが真相です。