左馬とはなぜ逆さ文字なのか?商売繁盛を呼ぶ縁起と由来の真実

左馬とはなぜ逆さ文字なのか?商売繁盛を呼ぶ縁起と由来の真実

左馬とはなぜ逆さ文字なのか?商売繁盛を呼ぶ縁起と由来の真実について徹底解説いたします。専門家の見解をお届けします。

左馬の物語を語る上で欠かせないのが、全国の将棋駒生産量の90%以上を占める山形県天童市の存在です。天童市観光物産協会の記録によると、幕末の織田藩政下で財政再建の切り札として始まった駒作りは、大正から昭和にかけて鑑賞用の大型飾り駒へと進化を遂げました。名工たちがケヤキやサツマツゲの銘木に漆で力強く書き上げた「左馬の飾り駒」は、山形を代表する伝統工芸品として全国へと広まりました。

しかし、左馬の信仰は木工芸の世界だけに留まりません。日本のやきもの文化、とりわけ陶芸界において「左馬」は、特別な霊力を宿す存在として古くから崇められてきました。それが「初窯(はつがま)の左馬」と呼ばれる神聖な風習です。

陶芸家が工房に新しい窯を築いた際、あるいは新年の最初に火を入れて焼き上げる最初の窯を初窯と呼びます。この記念すべき初窯において、陶芸家たちは敬意と祈りを込めて「左馬」を描いた茶碗や湯呑み、ぐい呑みを焼き上げる伝統があります。窯焚きの過酷な火入れを耐え抜いた初窯の左馬の器は、古来より「中風(ちゅうぶ:現代でいう脳卒中や半身麻痺などの病)を患わない」「無病息災・長寿をもたらす」という霊験あらたかな薬効的な信仰を持ち、茶道界の数寄者や名士たちの間で家宝として珍重されてきました。

遠州流茶道などの茶の湯の記録にも、祝儀の手前や新春の茶会において左馬の茶碗が用いられた事例が残されています。木彫りの駒から土と炎の器に至るまで、左馬は日本人の生命と生業を守護する道具として機能し続けてきたのです。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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