ヘアカタログの現場を取材すると、利用者の意識変化が数字にはっきりと現れています。ホットペッパービューティーをはじめとする大手ビューティーメディアの動向調査によると、ショートやミディアムカテゴリーにおける「ジェンダーレス」「中性的」の検索ボリュームは前年比140%以上の推移を記録しており、単なる一過性のブームではなく、ヘアスタイルの基軸として定着しました。
今なぜ、これほどまでに男女の境目が溶け合っているのか。その背景には、3つの決定的な理由が存在します。
第1に、「清潔感と洗練されたモード感の両立」です。従来のメンズショートに見られた硬い束感や刈り上げ強調、あるいは従来のレディースボブに見られた過度な甘さや内巻きカールを削ぎ落とし、毛流れと落ち感を重視したカットラインを採用することで、どちらの性別にも偏らない端正な佇まいが完成します。
第2に、「エフォートレス(無理のない自然体)な機能美」への要求です。毎朝の過剰なコテ巻きやハードワックスでの作り込みを必要とせず、手ぐしと上質なオイルだけでスタイルが成立する手軽さが、多忙な現代人のライフスタイルと完全に合致しています。
第3に、「ジェンダーバイアスからの心理的解放」です。社会学やカルチャー論の観点からも、外見でステレオタイプな役割を演じることへの忌避感が若年層を中心に浸透しており、「男だからこうあるべき」「女だからこう見せるべき」という無言の社会的圧力から自分を切り離すための最も身近なアプローチが、ヘアスタイルのニュートラル化だったと言えます。