2004年4月8日、世界中に衝撃的なニュースが駆け巡りました。イラクのファルージャ近郊で、ボランティア活動を行っていた高遠菜穂子氏、フォトジャーナリストの郡山総一郎氏、そして当時高校を卒業したばかりの18歳だった今井紀明氏の日本人3名が、武装勢力「サラヤ・アル・ムジャヒディン」に拘束されたのです。犯人グループは自衛隊の撤退を要求し、応じなければ人質を殺害すると脅迫しました。
日本政府による懸命の交渉と現地のイスラム聖職者協会の仲介により、拘束から8日後の4月16日に3名は無事解放されました。しかし、生還を果たした彼らを出迎えたのは安堵の声ばかりではありませんでした。当時の政府高官や一部メディアが「退避勧告を無視して危険地帯に入った」と厳しく批判したことを皮切りに、世論は急速に「自己責任論」へと傾斜していきました。
当時、今井氏は劣化ウラン弾による健康被害やストリートチルドレンの実態を日本の子どもたちに伝えるため、現地調査を目的に渡航していました。しかし、その志や純粋な行動意図はかき消され、メディアやインターネット掲示板では「売名行為」「国家に迷惑をかけた税金泥棒」といった激烈な言葉が連日のように飛び交う事態となったのです。