首里城正殿を襲った火災の進行スピードは、専門家の想像を遥かに超えるものだった。沖縄を代表する世界文化遺産の中心部である正殿は、伝統的な木造軸組工法で建てられており、大量の良質なヒノキや漆塗りの装飾が用いられていた。これが、一度火がつくと止められない巨大な燃料として機能してしまった。
沖縄特有の強い海風も災いした。風にあおられた炎は、正殿から北殿、南殿へと一気に燃え広がり、建物を包み込んだ。首里城の持つ美しき朱色の漆塗りは、文化財としての価値を高める一方で、乾燥した木材の表面を急速に燃焼させる性質を併せ持っていた。消火用水の確保や高台という立地条件の厳しさも重なり、消防隊の必死の放水活動も猛火を食い止めるには至らなかった。