ネット上に無数に存在するフリー素材ですが、実際の現場で活用する際にはどのような壁が立ちはだかるのでしょうか。都内の認可保育園で主任保育士を務める30代女性は、毎年の七夕準備における切実な内情を次のように明かします。
「6月下旬になると、七夕行事ペープサート用イラストの準備で残業が当たり前になっていました。ネットでダウンロードした可愛い画像を使おうとしても、左右反転させたときに輪郭がずれて棒に挟めなかったり、印刷すると線のフチがギザギザに荒れてしまったり。最終的には、表情の豊かな手書きの型紙を探し直すことになり、徹夜寸前で作業した苦い経験があります」
また、都内の制作プロダクションで地域活性化イベントのDTP業務を手掛けるグラフィックデザイナーの証言でも、解像度とカラープロファイルの問題が深刻な障壁として浮き彫りになっています。
「自治体の『七夕まつりポスター素材』を制作する際、クライアントから支給された無料ダウンロード画像がWeb用の解像度72dpiしかなく、B2サイズに引き伸ばした瞬間に絵がモザイク状に崩れた現場を幾度も見てきました。商業印刷には300〜350dpiの解像度、もしくは拡大縮小しても劣化しないベクターデータが絶対条件です。無料という言葉だけに飛びつくと、後工程で何倍もの修正コストを支払うことになります」
現場発のリアルな声が示すのは、「見た目の可愛さ」以上に、「工作や印刷の実用に耐えうるデータ設計がなされているか」という機能要件の見落としです。特に乳幼児を預かる教育施設では、子どもがハサミで切り抜くための輪郭線の明瞭さや、画用紙との相性が仕上がりを大きく左右します。