注文が入るや否や、職人は発酵した白い生地を両手でリズミカルに打ち広げる。ペシッ、ペシッと乾いた音が調理場に小気味よく響く。薄く引き伸ばされた生地は、摂氏300度を超えるタンドール窯の側面に一瞬で貼り付けられた。
数分後、長い金属棒で引き揚げられたタンドールナンは、気泡が黄金色に焦げてぷっくりと膨らんでいる。表面には溶かしバター(ギー)がたっぷりと塗られ、熱気とともに甘い小麦の香りを放つ。手で千切ると、外側はサクッとクリスピー、内側は驚くほどモチモチとしていて、指先に油が滲む。このナン単体でもペロリと平らげてしまえる完成度こそ、インド料理の神髄だ。