1954年3月1日、ビキニ環礁での水爆実験によって静岡県焼津港所属のマグロ漁船が被曝した第五福竜丸事件は、日本中に核への根源的な恐怖を呼び覚ました。この現実の悪夢を映画という形で昇華させたのが、特撮映画の金字塔『ゴジラ (1954年の映画)』である。
メガホンを取った本多猪四郎は、自らの過酷な従軍体験から戦争のリアルな爪痕をスクリーンに投影した。一方、円谷英二が手掛けた精巧なミニチュアワークと着ぐるみによる表現手法は、当時の技術水準を遥かに超越していた。夜の東京を火の海に変える巨大怪獣の姿は、単なるエンターテインメントではない。繰り返される戦争と科学技術の暴走に対する、痛烈無比な反戦・反核のメッセージだった。