日本映画の黎明期を支えた超大物時代劇スター、阪東妻三郎。その四男として生まれたことが、彼の人生の色彩を大きく決定づけた。長兄・田村高廣、次兄・田村正和。芸能一家のサラブレッドとして育った彼らに寄せられる世間の視線は、常に熱く、時に重圧となってのしかかった。
「父の背中はどこまでも遠く、兄たちの存在はあまりにも大きかった」。かつてそう振り返っていた彼だが、選んだ道は力みなく己の足で立つことだった。成城大学在学中に映画デビューを果たして以来、七光りという偏見を実力で静かに撥ね退けていく。殺陣の滑らかな所作、低音で響く美しい声。それらは血筋の賜物でありながら、彼自身のたゆまぬ鍛錬が花開かせたものだった。