紹介状の宛名マナーに関して、インターネット上で最も頻繁に見られる危険な誤解が、「患者が主治医へのお礼状や手紙を書く際にも『御侍史』を使うべきである」という思い込みです。
これは完全な誤用であり、実務マナーとしては「大恥」をかく典型例です。前述の通り、「御侍史」や「御机下」は、同業者である医師同士、あるいは医療機関同士が対等または謙譲の関係性で送り合う手紙でのみ用いられる特殊な脇付です。患者が医師宛てに「〇〇先生 御侍史」と書くことは、ビジネスパーソンが取引先の役員に対して「〇〇部長 殿」と書く以上の不自然さと無作法をもたらします。
患者側が病院や主治医に対して手紙・書類を送付する際の正しい書き方ルールは、以下の通り明確に決まっています。
- 主治医個人に宛てる場合:「〇〇病院 〇〇科 〇〇〇〇 先生」(「様」は付けず「先生」のみ、または「先生」を敬称とする)
- 病院全体・部署宛ての場合:「〇〇病院 〇〇科 御中」
- 担当医の名前が不明な場合:「〇〇病院 〇〇科 ご担当医様」
患者が医師に対して脇付を用いる必要は一切ありません。紹介状の封筒に印刷された「担当医 御侍史」という文字は、あくまで「送り元の医師から紹介先の医師への挨拶」であることを正しく理解しておくことが重要です。