「痛いのが苦手なので、一番細い針で採血してください」と希望する受診者は後を絶ちません。一般的に、針の太さは「ゲージ(G)」という単位で表され、数字が大きくなるほど針の外径は細くなります。しかし、細い針を選べばすべてが解決するわけではありません。
成人の標準採血で広く採用されているのは21G〜22Gです。23Gのような細い針(バタフライニードル/翼状針)を選択すると、確かに皮膚を貫く「チクッ」という痛みは半減します。しかし、針が細いということは、それだけ血液が流れる管が狭くなることを意味します。スピッツ(採血管)を何本も採る健診の場合、針が血管内に留まっている時間が1.5倍から2倍近く長くなり、血管内部の圧迫痛や拘束される精神的ストレスが増加します。
さらに臨床検査の現場で深刻なのが、細い管を無理に減圧吸引することで赤血球が破壊される「溶血(ようけつ)」のトラブルです。溶血が起きると、赤血球内のカリウムや酵素が血清中に漏れ出し、検査データが異常値を示してしまいます。結果として「正確なデータが出ないため、後日もう一度採血し直す」という本末転倒な事態に陥りかねません。細い針の希望は、「採血本数が1〜2本で、どうしても血管が細く刺せない時」に限るのが臨床的な正解です。