『今夜は離さない』の歌詞世界が描き出すのは、単純な甘い恋心ではなく、時の経過や別れの予感をはらんだ大人の濃密な情愛です。冒頭の囁くような掛け合いから、サビで感情が一気に解き放たれるダイナミズムは、聴く者・歌う者を一瞬で夜のバーカウンターへと誘います。
歌詞に登場する男女の言葉は、互いの寂しさを埋め合わせるかのような刹那的な優しさと、それでも引き戻せない強い引力に満ちています。男性側の包容力あるリードと、女性側の揺れ動く切ない心情が交互に重なり合うことで、まるで1本の短編映画を観ているかのような立体的な物語性を生み出しています。
言葉の端々に散りばめられた「夜風」「グラス」「灯り」といった情景描写が、歌い手の感情移入を助け、ただ歌うだけでなく「演じる」楽しさを味わえる点こそが、本楽曲の最大の魅力と言えます。