石田衣良の原作小説『池袋ウエストゲートパーク』における安藤崇(タカシ)は、沈着冷静で知性派、冷たい美貌で不良たちを束ねる「氷のキング」として描かれていました。しかし、ドラマ版で窪塚洋介が提示したのは、甲高いトーンでトリッキーに話し、踊るように街を闊歩する、誰にも予測不能なポップアイコンとしてのキングでした。
当時の制作関係者や後年のインタビューによると、この劇的なキャラクター改変は、オーディションや読み合わせの段階から始まっていたと伝えられています。台本通りのクールな二枚目を演じるのではなく、窪塚自身が「池袋というカオスな街でギャング数百人を率いる男は、ただカッコいいだけではリアルじゃない。底知れない狂気と子どもっぽさが必要だ」と直感し、独自の解釈を持ち込んだとされています。
現場では、演出を手掛けた堤幸彦監督と脚本の宮藤官九郎がその突飛なアプローチを面白がり、自由な裁量を与えました。「悪い悪い悪い」「ブクロ最高!」といった語感の効いたフレーズや、独特の手振り、急にテンションが変わる緩急自在の芝居など、数々のアドリブがそのまま本編に採用。原作ファンをも唸らせる、ドラマ史に残るカリスマキャラクターが生み出されたのです。