「舞台袖に立つだけで息が詰まる」「新幹線のドアが閉まった瞬間に発作が起きる」――。メディアで見せる笑顔の裏で、極限の恐怖と闘ってきた表現者たちは少なくありません。自らの知名度を賭けて病名を公表し、同じ苦しみを抱える人々に勇気を与えた芸能人たちの現在を追いました。
近年大きな話題を呼んだのが、シンガーソングライターの優里さんによる告白です。自身のYouTubeチャンネルや発信を通じ、パニック症および広場恐怖症と診断された事実を率直に明かしました。「逃げ場のない場所に行くと発作への恐怖が膨らむ」という生々しい実態を語りつつ、ファンの前で歌い続ける姿勢を提示。2026年現在も、自身の体調管理を最優先に据えたツアースケジュールを組み、音楽活動を精力的に継続しています。
また、この病の過酷さを早くから手記やインタビューで伝えてきたのが堂本剛さんです。10代から20代にかけての多忙を極めた時期、自著『僕の靴音』などで過呼吸や突発的な不安感、逃げ場のないスタジオや移動空間での苦悩を告白しました。剛さんはその後、自らの心身と徹底的に対話し、音楽という表現媒体を通じて感情を昇華。環境を自らコントロールする独自のワークライフバランスを確立し、現在も独自の表現を切り拓いています。
お笑い界では、中川家・剛さんが若手時代にパニック障害を発症し、極度の広場恐怖から電車に乗れなくなった経験が知られています。劇場への移動すら困難を極めた剛さんを支え続けたのが、弟の中川家・礼二さんでした。「途中で降りてもいい各駅停車で劇場に向かう」「舞台袖で常に背中を見守る」という礼二さんの献身的なサポートとコンビ愛は、多くの医療関係者からも共依存ではない「理想的な伴走関係」として高く評価されています。現在の堂々たる漫才ステージは、まさに病と向き合い乗り越えた証左と言えます。
このほかにも、Sexy Zone(現timelesz)の松島聡さんがパニック障害による一定期間の休養を経て見事に現場復帰を果たし、元King & Princeの岩橋玄樹さんも自らのペースでソロアーティストとしての地歩を固めています。彼らに共通しているのは、「完全に症状を消し去る」ことだけを目指すのではなく、「発作のトリガーを理解し、無理のない距離感で付き合う」境地に達している点です。