毎年、全国納税貯蓄組合連合会と国税庁が主催する「中学生の税についての作文」には全国から約45万編、高校生向けにも約18万編という膨大な数の原稿が集まります。都道府県知事賞や国税庁長官賞といった上位入賞を果たす確率は、実に数百倍から数千倍という狭き門です。
選考現場に携わる地方税務署の担当官や元中学校国語科教員の証言を総合すると、審査の現場には明確な「予選落ちのフィルター」が存在します。机の上にうずたかく積まれた原稿のうち、半数以上は「最初の段落」を読んだだけで脱落していく実態があります。
ネット上の掲示板やSNSでは、毎年夏休み終盤になると「作文の文字数が埋まらない」「税金の仕組みを写したのに評価がCだった」という悲鳴が溢れかえります。しかし、実際の審査員が下した講評録には、次のような生々しい本音が記されています。
「税務署が発行するパンフレットや自治体のホームページの要約を読みたいわけではない。我々が知りたいのは、多感な思春期を生きる生徒が、税という見えない社会契約と出会った瞬間に、どのような戸惑いを覚え、どう社会を見つめ直したかという心の軌跡である。」(地方コンクール審査関係者の回顧より)
教科書を書き写した文章は、審査員にとって「すでに何千回も読んだ退屈な再放送」に過ぎません。稚拙であっても構わないので、自分の家庭、近所の商店街、通学路でのリアルな体験を晒す勇気を持てるかどうかが、決定的な分水嶺となります。