二つの菓子が描いてきた歴史的背景と、特徴的な造形美も興味深い対照をなしている。
マドレーヌの発祥はフランス北東部ロレーヌ地方の街コメルシーとされる。18世紀、公爵の催した晩餐会で料理長が辞職するトラブルが起き、急遽メイドのマドレーヌという女性が祖母秘伝の貝殻型の焼き菓子を焼いたことが始まりと言われる。巡礼者が使うホタテ貝のシンボルを模した型で焼かれる形には、素朴な祈りと家庭の温もりが込められている。
一方、フィナンシェのルーツは19世紀末のパリ中心街に位置するパリ証券取引所周辺にある。忙しく働く金融家たちが、手を汚さずにスーツのポケットに入れて素早くエネルギー補給できるよう、パティシエが工夫を重ねて考案した。金の地金を思わせる長方形の金塊型と「金融家」を意味する名称は、まさにパリの都市文化と繁栄の象徴である。